上海蟹風味百力滋、百力滋と書いてプリッツと読むらしい。支店長から上海のお土産としていただいたので食べた。先に食べたS副長がまずいと言ったのを聞いて、お菓子がまずいなんてそんなばかな、おいしくなければお菓子としての役割をまったく果たさないのにと思いながら口にするとまずくはないけれど変な味だった。妙にスパイシーで舌が痺れそう。危険な薬をプリッツにまぶして密輸していたりして……それにしても上海旅行がうらやましい。ちょうど上海に行ってみたいと思っていたら支店長が上海に遊びに行った。もしかしたら自分の欲望が大気中の化学物質と混じりあって生まれた生き物が支店長かもしれない。だってあたらしいアイポッドが欲しいなと思っていたころに支店長が買ったばかりのアイポッドを自慢してきたし、つねづね武田鉄也のモノマネが上手にできたら楽しいだろうなと思っているけれど支店長は武田鉄也のモノマネを上手く、のびのびとしている。いまはまだ笑っていられるけれど、もっとエスカレートして他人に知られたくない秘密の欲望まで支店長によって明るみにされてしまっては困る。それを食い止める手段はただ一つ、密殺しかない。上司の股間を鈍器で連打、これしかない。