『UMA-SHIKA』第4号に参加しています、ぜひ読んでください、お願いします。

言葉にできない気持ちや、言い表せない感情なんてない、なぜなら気持ちや感情は言葉から成り立っているものだから。これまでそう思ってきたし、いまでもそう思っているけれど、うまれてからもうすぐ三ヵ月になる娘をみていると、まだ言葉を覚えていないのに笑ったり怒ったり、いろいろな顔をしていて、それはみつめているこちら側が勝手に自分たちの気持ちや感情にあてはめているだけかもしれないけれど、言葉の前に気持ちや感情があるのかもしれないとも思えてくる。

小説を読まなければ小説は書けない、そう信じてきたし、いまでもそう信じているけれど、読んだ小説の一節一節だけが小説を書かせてくるわけではないのかもしれないと思うようにもなった。今回掲載して頂いた「新世界の銀行員たち」という小説のことを考え始めたのは、社会人になったばかりの頃だった。それから何年も過ぎてようやくこうしてはじまりと終わりをもったひとつの小説になった。その間ずっと、日々の生活を送りながらも頭の片隅に、あるいは中央に、心の中に、話す言葉の端々やなにげない仕草の中にもうひとつの、あるいは複数の生活を同時に抱え込み、送っていたと言ってもうそにはならない。
あなたが毎朝乗る電車でみかけるスーツ姿のあのひとや、夕方立ち寄るコンビニエンスストアの駐車場に車をとめてパンを食べているあのひとも、同時にもうひとつの、あるいは複数の世界を生きているかもしれない。そのひとたちが読んだ小説だけでなく、昨日みたテレビや、家族との会話、ドアを開けると飛び去っていった鳥の声、隣家から聞こえてきた曲名を知らないピアノのメロディー、何年も前に訪れた旅先での出来事、実家で開いた古いアルバムに貼られた古い写真、そのほかたくさんの断片からそれらの世界は成り立っているだろう。
たとえば駅のホームに並んだひとたちが、それぞれのもうひとつの、あるいは複数の世界を頭上に、あるいは肩の上に浮かべ、あるいは口にくわえ、それとも小脇にかかえ、または抱えきれないのでキャリーバックの上にのせている姿がもしも目にみえたなら、すごい光景だと思いませんか!でも残念なことにそんな光景は目にみえないので、かわりに『UMA-SHIKA』第4号を読んでください、ぜひお願いします。

UMA-SHIKA(公式)

UMA-SHIKA』第4号目次


《小説》キリストノミコト ココロ社id:kokorosha


《往復書簡》権威のない世界文学評議会 紺野正武(id:Geheimagent) 石間異路(id:idiotape2


《小説》絶滅と初恋 ヨグ原ヨグ太郎(id:yoghurt


《小説》ブラックボックス ムラシット(id:murashit


《小説》走らずの馬 宮本彩子(id:ayakomiyamoto


《小説》新しい太陽の都 紺野正武(id:Geheimagent


《小説》理由 フミコフミオ(id:Delete_All


《小説》新世界の銀行員たち 森島武士(id:healthy-boy


《エッセイ》ポルチーニ茸を食卓に 吉田鯖(id:yoshidasaba


《小説》孤児たちの支え 保ふ山丙歩(id:hey11pop


《おじいさんの話》おじいさんの話 あざけり先生(id:azakeri


表紙デザイン:ヨネヤマヤヤコ(id:yoneyacco