Mostly sleep

転職してから夜遅くまで残業することが増えた。早く家に帰れるかどうかだけで考えれば、前の仕事の方がよかったということになるはずだけど、そうは思えない。早く帰れるといっても、まだやるべき仕事が残っていて(お前なんかに払う残業代はないからとっとと帰れ)と言われながら追い出されるような職場で気持ちよく仕事ができるとは思えない。結局のところは言われ方次第という気もするけど、早く帰ったとしてもずっと嫌な気持ちが続くのはよくないことだったと思う。そんなに簡単に、テレビ番組からネットフリックスにチャンネルを変えるみたいに、気持ちは切り替えられない。

とはいえ帰りが遅くなればやっぱり疲れるし、眠たい。目をしょぼしょぼさせながら、ものすごい猫背でパソコンに向かうことになる。眠気と猫背は関係ないかもしれないけど。

そもそもこんなに姿勢が悪くなった原因は、子供のころおばあちゃんが好きでおばあちゃんの真似をしているうちにこうなったと思っている。祖母が大好きで、よく祖母におんぶされながら軍歌を歌ってもらっていたと聞いているし、その軍歌もうっすら覚えているような気がする。りょじゅんかいじょうやくなりて〜まではメロディも浮かぶ。祖母は最近老人ホームに入った。認知症で、家族のことも覚えていないようにみえる。少し前までは、声をかければひ孫のことはわからなくても孫のことくらいはぎりぎりわかっていそうにもみえたけど、いまはもう違う。老人ホームへはまだ会いに行っていない。一日一日をほとんど眠って過ごしているのだろうか。

 

コアラの一日 ほとんど睡眠(A koala’s day mostly sleep)

 

そう動物園のコアラ舎の看板には書いてあった。コアラは1日のうち20時間くらいを睡眠と休息で過ごすらしい。主食のユーカリは栄養が少ないので省エネの生活、とのこと。

コアラも、祖母も、そして自分も、みんな眠たがっている。猫背というよりコアラのように背中を丸めてパソコンに向かう。コアラはコアラ舎のガラスの向こうで、祖母は老人ホームの一室で、自分はガラス張りのオフィスで、それぞれ眠がりながら過ごしている。動物園からユーカリを与えられるもの、国から年金を与えられるもの、会社から給与を与えられるもの。いろいろ共通点があるその三つの点を繋いだなら、地図上にどんな三角形が現れるのか。かつて祖母と一緒に動物園のコアラ舎へ行き、三つの点は一つになった瞬間もあったはずだ。どの点も灯りが灯っていて、まだ消えてはいない。

祖父が癌で亡くなる直前、自分は高校生だったけど、家族の他の誰でもなく祖母の名前を繰り返し呼ぶのをみて、そういうものなのかなと思ったのを覚えている。いまとなっては、他に誰の名前を呼ぶことがあるのかと思うようになった。そういうものなんだろうなと思いながら、三角錐のてっぺんあたりを眺めたりする。

ちなみに東山スカイタワーはてっぺんがピラミッドの形をしているし、タワーの途中には丸いパラボラアンテナがあるし、日本で一番かっこいいタワー型建造物です。