犬が戻ってきた。いなくなる前にはなかった、布が敷かれていた。布があるなら戻ってきてもいいと思ったのだろうか。そんな小汚い布をありがたがって戻るなんて、犬はバカだ。もっと寝心地のいい土地はたくさんあるはずなのに……流れ流れて九州にたどり着いた犬と、ふとした時に再会したかった。信号待ち、ふと隣をみると犬がこちらをみている。(九州には初めて来たが、まるで異国といった印象だ)といったような思いを犬なりに伝えてくるかもしれない。言語によって犬と通じ合うことはできないけれど、握りしめたマイクでラップすることはできる。