先週の日曜に訪問した先もU銀行ではなくこちらで住宅ローンの借換をして頂けることになったので、今月に入って住宅ローンの書類を書くのが四件目になった。だんだん書類を作るのがはやくなってきたとは思うけれど、それでも住宅ローンの書類は必要な物が多く、土地・建物の謄本、接面道路の謄本、公図、建図を法務局でとるのと、お客さんから住民票、印鑑証明、所得証明、源泉徴収票、健康保険証の写し、これまでの住宅ローンの返済状況がわかる通帳の写し、家を購入したときの売買契約書や重要事項説明書、火災保険の証書の写しを用意してもらう必要がある。それと担保物件を写真で2方向から撮影したものとをあわせると、ちょっとした雑誌程度の厚みになる。
まず最初に、目次にあたる添付資料チェックリストが1ページ目をかざる。一枚めくると住民票があり、家族構成がわかる。次に健康保険証で、勤務先と勤続年数が明らかになる。源泉徴収票と所得証明がそれに続き、年収がわかり、売買契約書で土地と建物をいくらで購入したのかがわかる。土地と建物とをあわせた価格になっている場合、土地には消費税がかからないので消費税から逆算すると建物だけの当初建築価格を知ることができる。土地の価格は路線価から求めるか、不動産業者からの聞き取りによる。重要事項説明書と一緒になっている間取り図をみれば、その家族がどんな生活をしているのか想像することもできるかもしれない。住宅ローンの書類を開くと、壁がすべて透明で中がまる見えの小さな家で生活する小人のような家族がメロンソーダの色をしたホログラムとして浮かび上がる。半透明の台所で食事の支度をするお母さんがみえる、いままな板の上で切っていた野菜をなべの中にいれた。宿題もせずにゲームばかりしていた長男が二階の子供部屋から階段をおりていき、階段の音を聞いた次男もリビングのテーブルについた。玄関からお父さんが入ってきて、ネクタイをはずしながら寝室へ着替えにいった。夕食よりも先にテーブルに並べられた麦茶の入れ物を次男が倒してしまって、お茶がこぼれる、書類が濡れてしまう!と思っても、ホログラムなので濡れない。お母さんがあわてて雑巾を持ってきて床をふきとるその背中をみつめていてふと、このお母さんはかつて愛しあい、激しく求めあい、ふたりで万里の長城を駆け巡ったことのある女性だと気づくが、気づいたところでどうすることもできず静かに書類を閉じるしかない。