今日が小学校の終業式のようだった。冬休みにはいると、昼間でも小学生が自転車に乗って縦横無尽に走り回るので交通事故に気をつけなければならない。あと、野犬にも注意が必要。踏切の前で電車が通り過ぎるのを待っていて、さあ渡ろうとすると線路の向こう側に野犬の群れが押し寄せていて踏切が上がると同時に飛びかかってくる場合がある。収穫が済んだ田畑で駆け回っている野犬を遠くから眺めるのは楽しいけれど、近づきすぎると襲われる。
かつてタバコ会社に勤めており、一本一本のタバコが機械によってものすごい速さで箱につめられていく部署で、不良品をみつけてそれを取り除く仕事をしていた老女が飼っていた柴犬が亡くなり、かわりにあたらしい柴犬の子犬を飼うようになったが、やがて前の柴のほうがかわいかった、いまの柴はかわいくないと言って散歩にも連れて行かなくなり、あるとき二代目は老女の家の庭を飛び出し、田畑を駆け巡り、電車が通り過ぎるのを待って踏切を渡り、のちに野犬のボスになった。老女は駅のホームでベンチに座り、禁煙のマークを無視してタバコを吸いながら、まだ美しく、みずみずしい唇でタバコをくわえていた頃のことを思い出した。タバコ会社の跡地には現在野球ドームが建っており、ドームの中も禁煙だという。