仕事帰りにアピタの中にあるスターバックスでFP2級の勉強をした。曇りのない透明なガラスの仕切りの向こうにはもうバレンタインデーコーナーが作られていた。どんなひとがチョコレートを買いに来るのかと思ってちらちら眺めていたらダウンジャケットを着た女性が大あくびをしながらチョコレートを選ぶのがみえた。その女性からチョコレートをもらうことはないので、どんな態度でチョコレートを選ぼうと知ったことかとも思うけれど、どうせならキスする直前のようなセクシーな表情で選ばれたチョコレートを食べたい。そんな表情を、透明なガラスではなくマジックミラー越しにみつめたい。マジックミラー越しの恋、情熱的な香りのするコーヒーを飲みながら特別なインクを使い、ひらがなで、カタカナで、常用漢字で綴る魔術的な手紙は弓矢になってあなたの胸をつらぬき、便箋にそっと口づけたその水分で画数の多い文字のインクがにじむ。にじんだ文字は氷の結晶のように美しく、やがてふたりを乗せた南極観測船昭和基地を目指す。