ひとりで休日出勤、もちろん支店は開いていないので支店の駐車場に車をとめて、住宅ローンのチラシを持って歩いた。知らないひとが住んでいる家のインターホンを押すのは緊張するのでいやだ。いやだけれど、仕事なので仕方ない。遠くまで歩くのもいやだったので、新しそうな家を4、5軒まわったあとで分譲マンションに向かい、ホテルライクなエントランスに設置されたボタンを101から順番に102、103と押しまくった。わりと若そうな女性の声が多かった。「はい、どちらさまですか」というその声を小型マイクで録音し、外で待機しているワゴン車の上部にあるアンテナへと電波を飛ばす、ここまでがコンマ2秒、音声解析チームがコンピュータで声の特徴を分析し、その声の持ち主が好む声を割り出す、コンマ5秒、そして耳の奥に差し込んである小型イヤホンに音声解析チームから「ダイヤル2だ」と指示が届く。1秒でボイスチェンジャーのダイヤルを2にセットして相手好みの声でささやくが、「すこし前にもう借換しましたので」と住宅ローン借換の提案を断られてしまう。201も301も401も、すべてすこし前によそで借換をすませてしまっている。畜生!全滅だ!駆け出してワゴン車の中を覗くと解析チームの喉元に手裏剣が刺さっている。支店の駐車場まで戻り車に乗り込もうとすると突然ボンネットから煙が上がり、爆発する。