今月の28日には人事異動の通達が出るという。三年間同じ支店で働いてきたので、今回の異動で転勤になる可能性がかなり高い。そろそろ引継書を書かないといけないと先輩たちはいう。おそらく後輩の男の子に引き継ぐことになるはずで、彼は初めて外に出るのでかなり親切な引継書を作ってあげないときっと困ってしまうだろう。集金先すべてにコメントをつけるのと、融資先についてのコメントと今後の方針について、あと集金先ではないけれどたまに訪問していろいろお願いしていた先についてのコメントと……こんなエキサイティングな引継書は初めてみた!新感覚、これまでの枠組みに捉われない21世紀の引継書をきみはもう体験したか!と絶賛されるようなものを作ってみたいけれど、でも……どうせなら仕事に直接関係ないことなども書き加えることにして、思い出がたくさんつまったものにすれば書くのが楽しくなって作業がはかどったりしないかな……でも書きながらこれまでのことを思い出して涙ぐんでしまいパソコンのディスプレイがみえなくなってしまうかもしれない。
あそこのおばあちゃんは近所の子供が万博のお土産として買ってきた万華鏡をみてから万華鏡に夢中になり、高島屋で万華鏡を買ったりしているとか、あそこのおばちゃんの旦那さんは給食に出すソフト麺をつくる工場でアルバイトしていて、たまに余ったソフト麺を大量にくれるけれど処分に困るとか、あそこの定食屋の主人は自宅の家具という家具すべてにキャスターを取り付けるのが趣味で、そうすればいつでも家具を動かして部屋の模様替えをすることができるとうそぶいているけれどほんとうはキャスターを取り付けること自体が目的化してしまっているに違いないとか、ああ、もうフォントがにじんできてしまう、だめだ……