ちょっとした遊び心から、(シャープ!)だとか(ボールペン、黒!)だとか念じる際に猥褻な気持ちが混じるとペン先からインクがにじみ出すように作られた。もちろんインクがにじむのは性器が湿った状態を模している。どんなに誠実そうな表情で机にむかっていても、紙の上がインクでベタベタになっていれば、ああそういうことかと思う。すこしでも猥褻な気持ちになると画数の多い文字は判読できなくなってしまうのでとても扱いづらい筆記具だけれど、にじみ具合をうまくコントロールするととても味わい深い文字が書ける。そんな文字が書けるのは猥談の名手しかいない。猥談の名手は、普段はまったく猥褻なことを考えず、ふとしたきっかけで瞬時に猥褻な話を始めることができる。たとえばボーリングの球に指を差し入れる瞬間に始めたりする。名手の書く文字は真っすぐな細い線と水墨画のようなにじみとを使い分けていてとても美しい。老人たちがふれあい会館のようなところで習う絵手紙に書くわざとふにゃふにゃさせた文字とはまったく異なっている。仮に猥談の名手が絵手紙を書いたとしても、その内容もメリハリがきいている。ふにゃふにゃした筆遣いで描かれた野菜の絵に、詩がそえられている。

白菜
しいたけ
にんじん

団地妻の
性器にいくつ
入るかな
入れながら
こうささやくだろう

季節のお野菜
いかがです